町田そのこさんの本を初めて手に取ってみた。
映画化されるのを知っていたこともあるし、何より表紙に惹かれた。
いわゆるジャケ買いしてみた。
52ヘルツのクジラの存在をこの本で初めて知った。
普通のクジラとは鳴き声の周波数が違うので近くにいても意思伝達ができない。
だからこそ世界一孤独な存在と言われている。
そんなクジラとこの本に登場する人たちを重ねている点がより過酷な境遇を描いていると思った。
ーーあのときのわたしは、52ヘルツの声を上げていた。
その一文だけで泣けてくる。
主人公の貴瑚(キコ)と愛(イトシ)は親から虐待を受けていた。
かつての自分を52ヘルツのクジラと重ねたキコはイトシと心を通わせていく。
そしてキコを救い出してくれたアンさんも、物語が進む中で52ヘルツのクジラだったと明らかになる。
虐待を受け、誰にも気づかれない、誰も助けてくれない
どれだけの孤独だろうか。
でもアンさんが抱えていたものを知ったときのその孤独の大きさも計り知れないものだった。
孤独は誰にもわかってもらえないのかもしれない。
でも声をあげないと伝わらない。
そして声をあげても聞いてくれる人がいなければ意味がない。
わたしはきちんと声を聞ける人だろうか。
わたしはキコやアンさんのような大人になれているだろうか。
願わくばこの世界から52ヘルツの声をあげる人がいなくなりますように。